2009年7月26日尾鷲港において
大阪府磯釣り連合会及び第4管区 尾鷲海上保安部、尾鷲渡船組合との合同海難事故防止訓練が行われた。当日は雨の予報もさることながら、前日からの南風によるうねりが発生しており、海況としてはやや荒れ模様。深い入り江を持つ尾鷲湾でこそ訓練をするには適しており、毎年この時期さまざまな釣り団体がこうした訓練を実施している。また兵庫県磯釣り連合会、和歌山荒磯クラブなどの友好団体の協力もあって、参加した釣り人は60名にも及んだ。
挨拶に立った大阪府磯釣り連合会、塩見孝男会長の言葉には「日ごろ体験しえないライフジャケットの浮力の認識、また人命の救助の協力体制を培っていただきたい」とのこと。また地元三重県釣り連盟大谷善正会長の弁は訓練としてその知識を身につけることも大事だが付け加えて日ごろから安全に対する意識のあり方が大切」とその重要性について述べていただいた。渡船組合を代表して組合長の浜田会長は「あいにくのうねりを伴う日にはなったが真剣に訓練を行って今後の釣りに役に立ててください」と渡船店の思いのこもった弁をいただいた。
今回尾鷲海上保安部から講師として保安課 原田係長と高村課長に実際の現場での講師として指導を仰ぎ実際の状況に則した形で進めることにした。救難ヘリコプターを要請しての訓練は今回この時間帯に都合がつかず、巡視艇「みえかぜ」からの近距離モヤイ銃を使って磯や防波堤に孤立した釣り人を救難する想定で行う。また海面落下の際のボーラによる浮力確認と船に引き上げられる際の体感荷重などを知ることも重要な訓練の一つとなっている。講習会場となった尾鷲湾のほぼ中央に位置する磯「投石」は平坦で大きな磯であり参加人数すべてをゆっくり収容できるスペースがある。
その「投石」より港を望む方向に巡視艇が接近しまずは孤立者救護から始めた。
射程距離150m~250m(風の向きによってその距離は異なる)の能力を持った「近距離モヤイ銃」大きな発車音とともに一瞬にして講習を受けている釣り人のはるか頭上を越え、確実に孤立者に文字通りの「命綱」を届けた。モヤイロープを釣り人は掴んで巡視艇から救難ボートが下ろされると徐々にそのボートを寄せる。ボートにはレスキュー隊員が一人乗り、島で孤立した人を勇気づけそのボートで巡視艇までいき回収される。こうした一連の救助訓練である。
またもう一つは海面へ落下した際、近隣の釣り人が手持ちの道具を使って迅速に救助する一例として「ボーラ」の使用を勧めた。
ボーラはもともと球状の重りにロープが付いており、狩りや戦で使われた投擲道具だが、おもりの代わりに水汲みバケツ、あるいはペットボトル(満タンにしないのがコツ)などを使用して遠投できるように準備する。紐の反対側をしっかりと持ち、落下者の頭上を越えるように投げる。引き寄せるのは陸にいる側であり、海に向かって落ち着くように声をかける。このような身近なものを使って行うも、自身の安全を確保しつつ行わなければならない。必ずライフジャケットを着用し、単独行動はしない。体調のすぐれない日は釣りに行くのをやめ、必ず家族等への連絡がつくようにしておく。
海難人身事故のほとんどがライフジャケットを身につけていない、または正しい検査を受けていないなどの不注意から来ることがほとんど。海での事故は「118」番。この番号の世話になることのないよう快適で楽しい釣りライフを送っていただきたい。
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